おまえきけ

140文字で足りないときに連投してリムられないための場所

開発はどうしてもナタリー・パケットという女を成長させたかったのだと思う(Apex s5からs6にかけての話)

「なんでワットソン、クリプトと仲悪いの???」

シーズン6からエイペックスを始めた友人が多くて、何度もされた質問。わかるよ。その理由はシーズン5のハントストーリーにあって、それは今では実機では読めず、そしてシーズン5をやってた人間も全員読んでたわけじゃない。ソロモードをクリアするとおまけで読めたお話だったのだが、ソロモードがまあ、あんまり面白くはなかった。自分の観測範囲内でもキャラクターが好きでエイペックスの世界観に強く興味があり……有り体に言えばバトルパス報酬のロード画面についてる小咄をかなりちゃんと読むような人だけがしっかり読んでた印象である。なのでほとんどの人にとっては「よくわからないけど仲悪くなっちゃった」だった。肝心のストーリーもコロナ禍で制作されたであろうことが滲み出ていて、翻訳のミスなんかもしばしば見られた。なのでs5のハントストーリーを読んだ人もモニョモニョしながらあらすじを紹介するしかない、本当に理解できてるかぶっちゃけよくわかってないからね!

簡単に言えばレヴナントとローバは対立しており、ほとんどのレジェンドはローバ側についた(信念とかではなくローバに半ば脅されてね)のだが、コースティックが裏切り内情をレヴナントにバラしていた。おまけにクリプトに疑いがかかるようにまで細工して。コースティックの目論見は一部成功してしまい、クリプトのドローンに襲われたワットソンは人間不信に陥ってしまう。おそらくs5のお話からs6の開始までに(ジブラルタルから)真実の説明があったが、彼女はそれを整理するには精神的に未熟だった。「人の話を聞いていれば真実にたどり着けたかもしれないというのに」とクリプトに苦言を呈されてしまっている。

本来は長期的に、ストーリーを織り交ぜ掛け合いが反映されて行くのを楽しんでもらいたかったようだが、頓挫してしまったと開発者が語っている。したがってなぜコースティックがクリプトをハメたのかは(考察の余地がありおそらくこうだろうというものはあるが)まだ明示はされていない。コースティックの真意も現時点では不明。残念だとはおもうが、当然だろうとも思う。世界が飛沫感染症の対応でわたわたしていなかったとしても、いつ次のシーズンを開幕するか最初から明示しているゲームで何カ国語に翻訳し、ボイス収録してそれを実装する手間をする気なんてすごいなと思ったものだし、実際できなかったと見るのが近いだろう。

しかし広げた風呂敷は畳まないといけないのでエイペックスくんは公式ツイッターで補完する道を選んだ。のでファンの顰蹙を買っている。s6では全然別の話を広げていたし、それを見なければ結局「なぜそうなったの」がわからない状況には変わりないからだが、、、まあここについては強く意見はしまい。ストーリーでどんなにそうですよ!といっても誰だよ知らない奴をこんなクライマックスのボスに持ってくるな言われたゲームも知っている。もちろんそう言われた時に明確なソースを持ってこれる方が我々オタクの溜飲も下がるというのはあるが。

結果的にいうとソロモード自体はしょうもなくて続ける価値はないのに、反映した掛け合いだけは(負の)反響が大きく、どうにかしなければならないというかなり厄介な状況になったのだと思う。

ただ、別にエイペックスくんもそこまで刹那的に開発されているとは思えない。s5の話を全くなかったことにしてワットソンに変わらず「ドゥリアン♪」させて「ああなんかこっちには反映させて行かない方針なのかな」と思わせることもできたはずだが、しなかった。するとどうしてもワットソンという女に一度このフェーズを噛ませたくてしかたがなかったんじゃないか??と思う。

前提が長すぎですが今日はそういう話です。

s5の話においていえばクリプトは全くの被害者だ。しかも「やってない罪を被せられた上に周りに信じてもらえない」のは彼にとって二度目。パク・テジュンに殺人とスパイの疑いをかけられクリプトになってからはたくましく色々しているくさいので残念ながらクリーンとは言えないのだろうが、クリプトという男は「元々」平凡な会社員であり、善を愛し、生い立ちの割には屈託なく成長した好青年である。クリプト、そしてパク・テジュンには真実という名の救いは必要だが、彼自身には問題はない。変な話だが、彼に何か「動き」を齎せて強制的に成長させるようなイベントはあまり必要じゃない。
もしコースティックがクリプトに対して何かしらの考えがなかったとしても、スパイ容疑をなすりつける相手はクリプトに以外に考えられないだろう。意識して人と距離を置いているが、根は聡明で仲間思いなクリプトに少しでもおかしいと思われてしまえば徹底的に調べあげられてしまう。そうでないとしても簡単には信じてもらえまい。

ワットソンの方は公式のキャラクターページで「心ここに有らずの呈を示したかと思えば、瞬く間に圧倒的な集中力を発揮する*1」と表現されていて、実は精神的な医学障害を持っていることは最初から明示されている。それでも彼女は天才技師であり、魅力的で、チャーミングなキャラクターだ。自分で立てたフェンスに話しかけるのも「ゲームキャラクター」としては全然許容範囲内だと思うし、殺人ロボットであるレヴナントにさえ態度を変えないのも、自分でフェンスを立てておいてボロボロになったらワオ……みたいな顔するのも、「愛してる人を痺れさせるよりも素敵な贈り物ってあるかしら」と笑うのも、キャラクターとしていい味を出していると思う。

ただ一人の女性として紐解けば、ワットソンはまだまだ世間知らずの少女なのだろう。血生臭い戦闘ゲームを「居場所」「この生き方しか知らない」としているのもあるし、「秩序正しく予測可能な奔流(電流)に、彼女は誰もが理解できぬ正しさを見出した」ワットソンは、つまり無秩序で予測できない奔流は苦手であることも示している。それがまさに先の事件であるが、スポーツマンシップにのっとり爽やかに銃で撃ち合ってるわけではないエイペックスゲームにおいて、無秩序で予想ができない濁流はあらゆるところに潜んでいる。ワットソンが今後も自分が開発したエイペックスゲームのリングの中で生きるのであれば、秩序ある電流の小川から出て、何もかもめちゃくちゃにする濁流の存在を認知し、渡り方を知る必要がある。

我々が見ていたワットソンというキャラクターは、そんな濁流も電気の力でビビッとすっとばすようなヤバイ女だと思っていたのだけど、ただ発展途上の少女がそう見えていただけなのかもしれない、と私はこのとき思ったりした。

部隊は家族といって分け隔てなく接してきたワットソンは、クリプトとコースティック、そしてレヴナントに辛く当たるようになったのだけど、同時に自分を助けてくれたレイスには好感を持っていて親友のような存在になっている。ワットソンは、おそらく人間関係に興味がなく、考えないようにするために全員を平等に扱ってきたのだがここにきて自分の心の機微、「これは好き」「これは嫌」という感情にようやく気づき出したのだろうと思う。それが顕著に現れてるのがランパートとのやりとりで、彼女とランパートには直接的なトラブルはないがワットソンはランパートを下品だと言って軽蔑している。踏んだガムを食うような女なので当然だと思うが、それ以前に、別に喧嘩したわけじゃないが苦手な人がいるというのは至極普通じゃないだろうか。ワットソンはようやくその普通を手にしようとしている。

めちゃくちゃ個人的でキモい話だけど、私は22歳の女性に精神的成長の機会を与えていることにすごく嬉しい気持ちを持った。我々の世界で言えば新卒で社会人として働いているかもしれない、しかも今までその才能で生きてこれた一人の大人が、一からコミュニケーションについて学ぼうと考えているのだ。
私はしばしば、大人になるまでに得られなかった技能は一生身につかないと絶望しがちだし、大人になったのであれば何もかも持っていなければならないと思ってしまいがちだ。でも重要なのは失敗しないことではなく、やり直すべき時にやり直すことなのだ。

私はブッ飛んでて人外っぽい天才側面がバリバリ出てるワットソンも好きだけれど、ナタリー・パケットという女性に一歩踏み込みためにどうしても必要だったと言われたら、それには素直に拍手を送りたい。というかそもそもキルやイントロのセリフは変えようがないので、今後ワットソンは本当の実感を持って「愛してる人を痺れさせるよりも素敵な贈り物ってあるのかしら」と笑うのだ。ゾクゾクするね。

(まあその表現方法がこれでいいのかと言われたら私には答え難いものがあるが、競技性が重んじられるFPSにおいてその辺がフレーバー程度になるのはしょうがないのかなという感情もある。IIDXのキャラなんて雑誌のコーナーで設定が開示されてたし)。

個人的にはエイペックスのキャラクターの扱いはかなり丁寧で、今後雑になることは多分ないだろうという期待はある。性癖に合致しない可能性はあるが……。なんかついこの前までs6のトレーラーのクリプトかわいいねっておもってたのにもうs7らしいので、ひとまずは楽しみにしておこうかなという、そういう話でした。

問題はコースティックおじさんだとおもうんですけど
ジブニキまじで助けてくれる?
頼んだで
あとガスおじも人の愛を試さないの